小説:血の涙たちよ、いま踊れ
「こんな景色なんて」と呟いた僕は、忌々しく積もった雪にスコップを突き立てた。
必要以上に冷たい空気が気管支を締め付ける。
風景はあまりに白かった。
「まだ10分の1だよ」と、白が嘲っていた。
「あと10年だな」と、晩秋に祖父が言った。
「あと10年もしたら、ここいらは終わりだ。ヤスケの家も、マゴシロウの家も、誰も継がねぇ。みんな出て行った」
「はぁ」と僕は言った。
ヤスケ?
マゴシロウってどこの家だ?
「仕方ねぇな。時代だもの」
10年、と僕は思った。
そんな未来の話をして