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あの日、天然水の森で。

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2003年から始まった「サントリー天然水の森」の活動。実は、このnoteを担当している”わたし”の父もコピーライターとしてこの活動に携わらせてもらっています。そして、時々師匠と一… もっと読む
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あーぼ へーぼ!?/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森 東京農業大学奥多摩演習林プロジェクト」の舞台、“東京農業大学 奥多摩演習林”を訪れた時のことです。 演習林長の菅原泉教授から、ちょっと変わった言葉を教えていただきました。 「この辺りでは、山の神様のことを<あーぼ へーぼ>と云いまして……」 えっ? あの、もういちど、仰っていただけますか…… 「<あーぼ へーぼ>、です……」 <あーぼ へーぼ>!? いったい、何語? 奥多摩といえば、ある地名が思い浮かびます。 「サントリー天然水の森 奥多

人里。驚き!の読み方。/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森 奥多摩」。 5月初旬から植林作業を始めたこのエリアの所在地は、<東京都西多摩郡檜原村字人里>です。 とうきょうと・にしたまぐん、までは普通に読めますね。 続く<檜原村>は、“ひのはらむら”と読みます。 ちょっと迷うかもしれませんが、まあ、なるほどね、ですよね。 <字>は“あざ”ですが、問題は<人里>。 な、なんと、「へんぼり」と読むのです。普通、読めません。 人里=へんぼり、なんて。 奈良の時代、この辺りには、大陸から渡ってきた人たちが集落

その岩の、言わんとするところ。/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森」を訪れて、さまざまな樹々を見ていると、数百年、数千年単位の大きな時の流れに、たびたび思いをはせます。 でも、ですよ、 樹々が営みを繰り広げる大地のことに目を向けると、時の流れは、数百万年、数千万年単位。それこそ、ケタが違います。 ↓の写真は、荒川の源流のひとつ “滝川” (「サントリー天然水の森 東京大学秩父演習林プロジェクト」の舞台となる東京大学秩父演習林を流れる川です)で見かけた岩。 大地で、どのようなことが起こって、このような文様ができたので

樹に会う:木肌の、そんな見方も、あったのですね。/あの日、天然水の森で。

森を訪ねて、樹々の肌をあれこれ見ているだけでも、けっこう楽しめます。 で、↓は、エノキ(榎・ニレ科)です。 んー、まあ、一般的には、とりたてて美しいとか、特徴的でほれぼれするとか、そういう類いのものではないとは思うのですが、今回、エノキをご紹介するのには、理由があります。 晩春の頃、この樹の表面を、なめるように見つめる方々が、いらっしゃるからです。 ↓こちらも、エノキ。 よく見ると、なにか、いますね。ほら、写真の真ん中あたりに、くねっとしたものが。 樹皮の色と同化して、

忘れ角/あの日、天然水の森で。

「天然水の森」を歩いていると、落とし物に出会うことがあります。 年ごとに生え変わる、雄のシカの角も、そのひとつ。 森の中で、どれくらいの時を経たものでしょう。 写真の角は、ずいぶんと風化している様子がうかがえますが、4回枝分かれしているところを見ると、この角の持ち主が5歳になる時に落としたものでしょうか。 シカといえば、近年、その数が激増して、自然生態系に深刻な影響をもたらしています。ですが、シカも好き好んで、自分たちが食べるものに困るほどまでに増えているワケではないでしょ

樹に会う:ブナラ!?/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森 奥大山」の<鏡ヶ成(かがみがなる)ふれあいの森>。 その一画で、おもしろい樹に出会いました。 一見、1本の樹。ですが、ミズナラ(左側)とブナ(右側)という違う種類の樹が、寄り添う、というより、まさに一体となって巨木になっています。 雪深い、過酷な環境で生きるブナなどは、↓の写真のように、ペアをつくってお互いに支え合うように大きくなっていくことが多いそうですが、 ミズナラとブナという、別の種類の樹が、ここまで身を寄せ合いながら、立派に育っていくなんて

気になる 実のなる 宿り木/あの日、天然水の森で。

ブナが葉を茂らせている間は、そう目立つことのない“宿り木”も、冬には、ひときわ目を引きます。 それに、気にもなります。その訳は…… いました、いました、出会えました。 宿り木の実をお目当てに、ブナの森に姿を現した<ヒレンジャク(緋連雀)>。 冬を越すために日本に渡ってくる“冬鳥”ですが、ほとんど渡来しない年もあるそうです。 間近で見ることができた幸運に、まずは、感謝しなければ。 訪れるたびに、うれしい出会いがある「サントリー天然水の森 奥大山」からのお知らせでした。

樹に会う:「私はブナ」と、樹の肌が言っております。/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森」に分け入ると、さまざまな樹々が出迎えてくれます。 例えばそこが「サントリー天然水の森 奥大山」であれば、何といっても目を引くのはブナの巨樹たち。 それぞれに個性はあるのですが、地衣類をまとった樹肌で、「私はブナです」と、明らかに語りかけてきます。 まさしく、ブナの樹肌。 こちらも、いかにもブナ。 そしてこちらも。 ブナの樹肌をひとつひとつ見ているだけで飽きることのない、「サントリー天然水の森 奥大山」です。 2013.6.20|サントリー

雪面のショーケース/あの日、天然水の森で。

雪深い奥大山の春。 雪面は、新雪が次々と降り積もる冬の頃とは、また違った輝きを見せてくれます。 日中、陽光を浴びてうっすらと解けた雪が、日が落ちて気温が下がると、凍る。 昼と夜の繰り返しが生み出す、キラキラのモザイク模様です。 そんな雪面に、風や雪にあおられて落ちた木の葉が姿を現しているところが、いくつかありました。 たとえて言えば、雪と氷でできた、木の葉のショーケース。 ↓は、ミズナラの落葉です。 ↓は、ヒノキの葉。 (ごめんなさい。掲載した写真では、その魅力を十分

ブナの森工場は、雪の森工場。/あの日、天然水の森で。

西日本最大のブナの森が広がる奥大山にあるから、「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」。 分かりやすいですね。 ところで、この工場。西日本でもっとも雪深い場所の一つにある、という意味では、“雪の森工場”でもあります。 数時間、雪が降り続くと、ほら、ロゴマークもちょっと違ったデザインに。 ロゴマークを勝手に変えるなんて、普通は許されないことなのですが、そこは雪と風の仕業。怒るわけにもいきませんし、なかなか絶妙なセンスに思えてきたりもします。 積算すれば、冬の間、数メート

樹に会う:ブナには 冬が よく似合う/あの日、天然水の森で。

晩春の芽吹きの頃も 初夏の新緑の頃も 盛夏の深緑の頃も 涼秋の黄葉の頃も みずみずしく はればれとして つややかで たおやかで ブナは 素敵です ですが ブナは なんといっても 冬 だと 思うのです 雪の重みに耐えかねて 枝が折れてしまうこともしばしば それでも しっかり生きている証拠を見せてくれる その姿は 威厳にあふれ 神々しくすらあります ブナには 冬が よく似合う と思うのです 2014.1.30|サントリー天然水の森 奥大山

樹に会う:冬赤/あの日、天然水の森で。

「冬青」と書いて、ソヨゴ。 文字通り、冬にも青々とした葉を身にまとう、その木は、冬には鮮やかな赤い実で身を飾り、いっそう艶やかな姿を見せてくれます。 冬にも青々とした葉は染料になり、純白の糸を、葉色からは想像もつかない、鴇の羽色の淡い紅に染め上げるのだそうです。 そうと知ると、都会の庭先にも植えられ、森の中でもけっして珍しくはないこの木のことが、いっそう、愛おしく思えてもきます。 さて。冬青の、冬に赤い実を意識すると、他の赤い実も目に飛び込んできます。 例えば、シロダモ、

花に会う:人字草・ジンジソウ/あの日、天然水の森で。

「サントリー天然水の森 南アルプス」。 渓流沿いの岩肌に、人、という字に咲く花を見つけました。5つある花弁。 その内の2つを、まさに人という字のようにスッと伸ばす、とても印象的な花でした。 2010.10|サントリー天然水の森 南アルプス

教えに会う:草という名前の草はないのですね、先生。/あの日、天然水の森で。

「これは面白い。ここにカンスゲ(寒菅)があって、すぐそばに、コカンスゲ(小寒菅)がある」。 「サントリー天然水の森 奥多摩」の植生調査に同行した時に聞いた、東京農業大学・中村幸人(なかむらゆきと)教授の言葉です。 カンスゲ。 コカンスゲ。 確かに、同じようで、明らかに違います。 教えてもらえなければ、そうじっくりと見つめることはなかったでしょう。考えてみれば、名前を付けるということは、その存在の独自性に気付いて、そのかけがえのなさを大切に思うことの証なのですね。 草