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伐られた樹はどうなるのかという話

このテーブル。
隙間が空いているし、曲がっているし、いわゆる“テーブル”としては珍しい形をしています。

このテーブルでビーズアクセサリーをつくったり、ビー玉で遊んだりすることは、
やる前から大惨事が目に浮かぶので、避けたいところですが、、、
カーブや木目や穴など、樹そのものを生かしたデザインが素敵だと思いませんか?

これは、「サントリー天然水の森 天王山」に生えていたヤマモモの樹でつくられています。

2018年関西を直撃した台風の影響でヤマモモやヤマザクラ、マツなどの巨木が、たくさん倒れてしまった。森の整備をする中で、それらの倒木を運び出し、それぞれの個性を生かした様々な形の家具が作られた。そのひとつがこのテーブルというわけです。

このように「サントリー 天然水の森」の活動から生まれた樹の材を、サントリーでは「育林材いくりんざい」と呼んでいます。

実は、森のことも、活動のことも何も知らないわたしが最初に触れたのが、この「育林材いくりんざい」でした。

森の師匠に会う前のこと

隠していたわけではないですが、わたしには、コピーライターをしている父がいます。

まぁ変わっている父で、母が苦労してきたのも見ているので、絶対父と同じ職種にはならんぞ!なんて思っていたのですが、気づいたらわたしもコピーライターをしているわけで、“血は争えない”という言葉を実感しています。

そんな父は、長いことコピーライターとして、「サントリー 天然水の森」と関わらせていただいています。

そして2年ほど前。公式サイトをリニューアルすることが決まっていて、その打ち合わせを、ちょうどオープンした、テーブルなどに「育林材いくりんざい」を使用したカフェで、視察も兼ねて行うことになっていました。

リニューアルの目的として、より若い人たちの共感を得ることも含まれていました。そのため、サントリー社内や父の間では、若いスタッフとチームを組む必要があるという声が上がっていました。

そこで、父は「アシスタントを連れていきたいと思うのですが・・・」とサントリーへ連絡を送り、「ぜひ」ということで、わたしも一緒にカフェに行くことになりました。

「あ、お疲れ様です。アシスタントです。
・・・あ、娘です。」

待ち合わせ場所の田町駅の改札前で、ちょっと恥ずかしそうに父がわたしを紹介する。

「えー娘さんなんですかー!びっくり!」

言ってなかったんかーーい!と驚きながら、「すみません、娘です。」と、なぜかすぐ謝るTHE日本人な挨拶をしてしまった。

その日お会いしたのは、「還暦なんで金髪にしました」なんて笑う雰囲気がありすぎる男性とチワワのようにクリッとした目で優しく笑う小柄な女性。

合流したのち、カフェに向かいました。

正直この日まで、父の仕事の詳細も森の活動のこともまったく知りませんでした。

いちばん初めのnoteでも書きましたが、森の活動ってみんな慈善活動としてやっているよね、くらいの斜に構えようだったんです。

ただ、ここで「育林材いくりんざい」に触れることで、この活動に興味を抱くことになり、父のアシスタントとして関わらせていただくことになる。

どうしても伐らなきゃいけない樹がある

雰囲気ありすぎ金髪男性は、「サントリー 天然水の森」の広報活動をしていて、元々コピーライターをしていたらしい。

(なるほど、だから還暦で金髪というイケてる思考が生まれるのか。納得。)

そして、優しい笑顔のチワワさんは、「育林材」プロジェクトを担当されている。
このカフェのバーカウンターやテーブルの天板をすべて育林材にしたのも、この方の発案だったらしい。すごい。

わたしが今まで何をしてきて、今何をしているか、なんて話をしながらも、
そのお二人から、「育林材」のことを中心に森の活動の話を聞いた。

森を守るためには、どうしても樹を伐る必要があるらしい。

例えば、作業道。
道がなければ、樹を運びも出せないし、車も入れない。
安全に森を整備・研究をするために、欠かせない。
そんな道を作るときには、樹を伐らねばならない。

森が真っ暗なとき。
以前にnoteでも書きましたが、森が豊かになるためには、光が必要。
だから、ある程度光が差し込むように、樹を間引かなければいけない。

(詳しくはこちらをご覧ください!)

そして、病気の蔓延防止のため。
樹も人間と同じように病気にかかることがある。
その一帯にその病気にかかる樹ばかりが生えている場合、これ以上広がらないように伐ることもある。

などなど、
とにかく森を豊かにし続けるために、樹を伐ることは必要不可欠のようです。

「でも、もったいないと思うんですよ。
せっかく元気に育った樹を伐ってしまうなんて。
だからなんとかして隅々まで、有効活用したいんです。」

クリッとした目で、真っ直ぐわたしに伝えてくる。

これらの樹は、林業的に”いい材”を育てるために伐られた樹ではなく、あくまで森や林を育むために伐られた樹なので、「育林材」という名前をつけたらしい。

「有効活用するだけでなくて、もっといろいろな人に触れて欲しいんです。」

このカフェのテーブルなどもそういった想いも込めて作られている。

ただ、ふしもあるし、りもあって、加工が非常にしにくいこともある。
実際にこのカフェを作るときも試行錯誤したらしい。

価値が低いものなの?

このカフェを作る上でも大変だったように、「育林材」含めそういった類の材って、穴が空いていたり、曲がっていたり、正直質が悪く、価値が低いもの、というイメージがどうしたってありました。

なんだか、余りもののような。
仕方なく、もったいないから使っているみたいな。

でも話を聞いていると、ちがうらしかった。

そもそも、いわゆる”いい材”として利用される樹と同じくらい、加工しやすい”いい育林材”も存在する。

ただ、確かに、穴の空いたもの、節があるもの、曲がったものもある。

「でも、逆にそういった樹を欲しがる職人の方もいるんですよ。」

穴やゆがみ、模様があった方が、むしろ樹らしさを表現できて、魅力的と感じる職人さんも、数少なくではあるけど、いるんだそうです。

冒頭のテーブルになった「育林材」

「そういえば、これもつくったんです。お土産にどうぞ。」

もっともっと、いろいろな人に「育林材」が身近なものになればとつくったらしい、こちら。

ハガキです。

あのふっとい樹をどうやってこんなうっすくしているのかしらと不思議になる。
これを作ろうと考えついたことも驚きでした。

職人の技術と工夫が凝らされていて、この薄さと耐久性が実現しているらしい。
いただいて一年以上もたつけれど、ほのかにヒノキの香りもするのが、素敵です。

そしてそして、見て欲しいのは。
今載せたのが、父がいただいたハガキで、
これは、わたしがいただいたハガキ。

あたりまえだけど、全然違う。
木目も、樹の色も。

これこれ、自然の面白いところ、これよ。

使いにくい材でも、木目が均一じゃなくても、その樹にしか出せない味があるんですよね。

まさに、誰もが小学生で学ぶであろう「みんなちがって、みんないい」なのです。

だから、「育林材」って、価値が低いとか高いとかそういう話ではなくて、それぞれにしかない個性のある、魅力的な材だと思います。

そんな話を聞きながら、わたしは「育林材」を通して、「サントリー 天然水の森」に惹かれ始めていた。

「育」に込めたこと

先ほどもお話ししていたように、
森や林を育む材だから、「育林材」という名前をつけたらしい。

けれど、「育」にこめられた想いはそれだけではないという。

わが家に大事そうに飾ってあるこちらのタンブラー。
木目が最大限に生かされていて、個人的にとても好きなんです。
光をかざすと、ほら、こんな感じ。

そして、これは平安の時代から受け継がれる、寄木とろくろの技を使って作られています。

こういう伝統工芸って、今失われつつありますが、その技術でしか出せない味がまたあるわけです。

そういう伝統技術が継続的な活動になる仕組みを「育む」。
そんな想いもまた、込められている。

森の樹としての役割を終えた木々は、そうした職人の技によって、新たな命をふきこまれています。

そして、いろんな想いをのせて、わたしたち生活者のもとに届く。

わたしが「サントリー 天然水の森」や森自体に興味を持つきっかけが「育林材」であったように、誰かも同じように、その入り口に立つかもしれません。

そうすれば、それもまた、間接的であるにしろ、森や林を育むことになるのだと思う。

というより、なればな、と思う。

気軽に「育林材」に触れられる場所は、今は少ないけれど、ぜひカフェに足を運んでみてください。

途中紹介した、テーブルやタンブラーについても、ここにまとまっています。
職人技が見れる動画もあるので、ご覧ください。

今日も最後まで見てくださって、ありがとうございました。


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